シェア・インターナショナル 2024年6月号

シェア・インターナショナル誌のオンライン版では、印刷版からの抜粋を紹介しています。各オンライン版には、ベンジャミン・クレームの師による完全な記事が含まれています。幅広いトピックをカバーする他の記事のほとんどは抜粋です。オンライン版には通常、Q&A、読者からの手紙、マイトレーヤ臨在の徴の写真も含まれています。

印刷版の目次は、ページの下部をご覧ください。

contents

理性への呼びかけ

──覚者より
ベンジャミン・クレーム筆記

この世代が直面している最も重大な問題は生態系の不均衡であり、それが地球の膨大な領域を脅かすことを人類が認識する時が間もなくやって来る。知ってのとおり、この問題がどの程度のものかについて人間の意見は分かれている。しかし、この生態系のジレンマを真正面から直視して対処しない限り、多くの者にとってその将来が危ぶまれる。
間もなく、多くのグループがこの危険の深刻さに気づくだろう、そして年毎に、彼らは大災害に近づいていく。地球温暖化によって放たれたエネルギー(フォース)は、今や人間が使用できるコントロールの装置をはるかに超えている。
だから、まだ少し時間がある間に、注意して聴きなさい──海の水位は容赦なく上昇しており、しかも人間は、のんびりと、彼らの将来を賭けている。
S.O.P.──Save Our Planet(我らの惑星を救いなさい)。

(2014年11月8日、シェア・インターナショナル誌2014年12月号)

2016年7月25日、ベンジャミン・クレームとの編集会議の最中、彼の師である覚者は、当時の世界危機についての見解の提供を求められた。当時は、英国がEU離脱を投票で決め、シリアでは戦争が継続中で、南米ではジカウイルスが人命を奪い、ヨーロッパの各都市で多くのテロ攻撃が発生していた。以下に覚者のコメントからの抜粋を掲載する。私たちの本質的な一体性と変化の必要性を認識するようにという呼びかけは、8年近くたった今、いっそう緊急性を帯びてきている。

2016年の危機についての覚者のコメント

……大混乱はほとんどいつも、ひとつの宇宙(コズミック)の状態(周期)から他の状態への変化の結果である。多くの人々はいまだ古いあり方の中に捕えられている。多くの人々は行動やあり方を変える必要を認知するには、あまりにも不安であり、あるいは全く気づいていない。
また、人類が新しいエネルギーにどう反応するかの問題である。ほとんどの反応は貪欲か恐れに基づいている。富める者たちは(党派などに左右されず)独立し、非常に貪欲になった。彼らは利用し得るすべてを有利に獲得できないだろうということを恐れており、また彼らの富を失うことを恐れている。人は、世界がひとつであることを、ひとつの人類であることを認識しなければならない。貪欲と競争に基づいて資源・富を管理する金持ちは、危険を覚悟で、この真理を否定する。

(シェア・インターナショナル誌2016年9月号)

編集部より

編集部のコメント

大虐殺が何カ月も続き、世界の指導者の大半に道徳的勇気が欠けていることが明らかになった後、抵抗と抗議という単純な行為によって生み出された希望が、世界の集団的な精神を高揚させている──つまりは、善意の人々の間で。学生たちは居場所を要求し、権力に対して真実を語る。学生たちは、その行動と現状改革主義により、現代における最大の道徳的な課題に新たな焦点を当てた。

国連人権宣言は、当時の指導者や勇気と洞察力にあふれた人々によって作成された。私たちがその時、「二度と繰り返してはならない!」と宣言して以来、人類は何十年もの間、「試練にさらされて」きた。
第二次世界大戦後、私たちは世界大戦の教訓を学んだのだろうか。何も考えずに、「昔と同じ」生き方を続けることを自分たちに許すのだろうか。貪欲と分離主義が当然とされ、経済・政治システムに組み込まれたまま、他者の苦しみを無視し続けるのだろうか。
あれから約80年がたった今、世界は同じレベルの危機に達している。
ベンジャミン・クレームの師はこう書いている。「人類は着実に、彼らの偉大なる決断に向けて前進する。ほんの少数の者以外には知られていないが、人間は、地球上での長い歴史の中で、かつてなかったほどに試されている」(「偉大なる決断」より)
「人間は今選択に直面している──世界をひとつとして見て分かち合い、安全とありがたい『平和』と幸福を知るか、あるいは地球上の生命の終末を目撃するか」(「マイトレーヤの優先事項」より)
新千年紀が始まって四半世紀が過ぎ、2025年の覚者方の秘密会議(コンクラーベ)を目前に控えた今、私たちは行動を起こすことによって、いのちと協力を選択しなければならない。私たちの手の内にあるものとして差し伸べられた栄光の未来を望むのであれば、あらゆることが重要であるかのように生きなければならない──実際にそうなのであるから。私たちが何をするか、どのようであるかは、「全体」にとって重要である。現在においてはかつてないほどに。ベンジャミン・クレームの師は『偉大なる決断』という記事でこう書いている。「マイトレーヤの愛のエネルギーは非個人的であり、平和と正しい関係を願う者たち、そして貪欲と競争を好む者たち、すべてを刺激し、したがって最後の戦いと完全な自己破壊の危険を伴う。ゆえに、今、すべての人間に突き付けられた選択は非常に重要である」….

読者質問欄

世界中のあらゆる講演において、そして生涯のほぼ毎日、ベンジャミン・クレームは広大な範囲に及ぶ大量の質問を受けてきた。この大量の記憶から、過去の年月にベンジャミン・クレームと彼の師である覚者によって提供された回答を提供したい。

Q:西洋のオーソドックスな(フロイト派およびフロイト後の学派)の精神分析心理学は、すべての人にとって必然だとされる一定の基本的前提に基づいています。例えば、父や母との愛情─憎悪関係や、エディプス・コンプレックスなどです。(1)これは妥当な見地ですか。ノイローゼは避けられないことですか。それとも、そのようなノイローゼは、ある場合には当てはまるが、他の場合には当てはまらないですか。(2)もし西洋の心理学が部分的にのみ正しいのであるならば、普遍的に妥当なものとなるためには、どのようなステップが取られる必要がありますか。現代の心理学が秘教心理学と融合し始めることは可能ですか。

A:(1)明らかにエディプス・コンプレックスは存在します。人々は過去にも現在も、親を愛し、同時に憎みました。そして、人々はこの未解決の両分を、後々の人間関係のすべてに持ち込みます。これがフロイトの基本的な臨床的、客観的研究結果です。それが必然的な避けることのできないことであるかということは、また別のことです。秘教の見地からすれば、そうである必要はありません。これは社会的に条件づけられた現象であり、間違った人間関係が、ひとつの世代から次の世代へと伝えられた結果です。さらに、それがどの程度存在するかは、個人の進化の段階、特に、その個人が識心(メンタル)的に偏極しているか、情緒(アストラル)的に偏極しているかによります。高度に進化した、メンタルに偏極した弟子にとっては、全くそうである必要はありません。彼は、通常、自分の矛盾し合う感情をうまく処理することができ、解決をします。より高度に進化していればいるほど、これが言えます。
(2)現代の心理学と精神分析学の考え方の中にある大きな欠陥は(間もなく是正される欠陥ですが)、人間の魂とその転生の周期についての概念が抜けていることです(ユングとユング学派を除いては)。必然的に、これは因果(カルマ)の基本的概念をも無視します。
七つの光線とその強力な影響は、現代の心理学者たちにとっては、いまだ閉じられた本のままです。人間の三重の構造──霊と魂と肉体人間(パーソナリティー)──の特質が知られ、受け入れられるまでは、再生誕の事実、カルマと個人の光線の影響が考慮されるまでは、そして魂の特質と個人の目的が確認されるまでは、現代の心理学はこれ以上進歩することができません。現在のところ、ノイローゼの単一的基礎の概念から原始的エネルギーの発見を導いたウィルヘルム・ライヒの先駆的仕事を除いて、一般的に言って、現代の心理学はその内部に葛藤を抱えています。ノイローゼの影響の改善に多くの有益な臨床的仕事をしているかたわら、現代の心理学は意識せずして、次の大きな前進──人間の魂の「発見」──を待っています。

編集長への手紙

シェア・インターナショナル誌には、手紙の保留分が多数あり、それらはベンジャミン・クレームの師によって、覚者方あるいは「代弁者」との本物の出会いであると確認されたが、いまだ掲載されていない。
 その他の掲載された手紙は新しいものである。覚者が関わっているかどうかを確認すること、もしくは示唆することもできないが、その体験が希望、鼓舞、慰めを提供することで「それ自体が語る」ということがあり得る。読者の考慮のために、これらの手紙は提供されている。

2006年12月8日、ロンドンでの友人の誕生日パーティーから帰宅しているところでした。夜遅かったので、友人たちはタクシーに乗るようにアドバイスしてくれましたが、少し贅沢だと思い、バス停で待つことにしたのです。けれどもあまりに遅い時刻だったので、乗りたいバスは夜の運行を停止していて、ほんの短い距離でも二つの路線のバスに乗る必要がありました。そのまま待っていると、道の先に黒いタクシーが見えました。まるで誰かを待っているように止まったり進んだりしていて、それが私の注意を引きました。するとそのタクシーがバス停に近づいてきたので、私はすぐに、やはりタクシーに乗ることにしたのです。
タクシーがクリスマスツリーの店の外側を通り過ぎていき、とてもたくさんのツリーがあったので、そのことを口にしました。タクシー運転手はとても小柄で年配の人で、白髪頭にメガネをかけていました。西インド諸島特有の強い訛りがあって、「クリスマスがもうすぐだね」と言いました。それから彼は「一年でこの時期に悲しくなるのは、あらゆる商業主義と『持たざる人たち』のことについて思うからだよ。とりわけ子供たちのことをね。そうした家族は皆、借金を抱えることになり、借金の中で新年を迎えるものなんだ」というようなことを言いました。運転をしながら、彼はさらに話し続けました。彼の話を聞き取るのは難しかったので、前屈みになって本当に注意深く耳を傾けていなければなりませんでした。彼はこの時期のホームレスの人たちや年配の人たちにも心から同情すると言っていました。
このことはすべて私にも非常に関係のあることでした。クリスマスが近づいてくることで悪化する、お金の心配事を抱えていたからでした。私はこのお祭り気分の時期の間、ホームレスのためのチャリティーでボランティアをすることも考えていましたが、私には十分な時間がないと思い始めていたのです。この出会いの後、絶対にボランティアをしようと心に決めました。
それからタクシー運転手は「どうやって食べたり、飲んだり、浮かれたりできる? そうしたホームレスの人たち全部が何も持っていない時に。言っている意味が分かる?」と言いました。さらに続けて「あまりにひどい借金を抱えている家庭があるのを知っている。借金を抱えるのは本当にひどいことなんだ」と言っていました。そしてクリスマスについて再び話し始めて、「もし私があなたを愛していて、あなたが私を愛しているなら、あなたに紅茶かコーヒーを一杯入れてあげて、少しおしゃべりするだけでもいいじゃないか」と言いました。他のことは何も重要ではないというようなことも言っていました。
それから彼が私の目をミラー越しに見つめながら、「でもね、私が本当になりたくないのは何か分かる? 金持ちさ」と言ったのです。「なぜ?」と私は尋ねました。彼はこう言いました。自分はすでに『持たざる人たち』ととてもかけ離れてしまったと感じているので、もし金持ちになったら、どれほど離れていると感じるだろう、と。「私たちは皆、分かち合わなければならない」と彼が言いました。「私たちは皆、お互いに助け合うことができる。例えば、あなたは私が生計を立てられるよう助けてくれている。私はあなたが家に帰るのを助けることができる!」。そう、その言葉でタクシーに乗るという贅沢について、気持ちは楽になりました! 私はもっともっと話をしたくなりましたが、家に着いてしまいました。私がさようならを言うと、彼がとても陽気な親しい様子で「新年の前には会わないかもしれないから、心から楽しいクリスマスを過ごして!」と言ってくれました。
このタクシー運転手はマイトレーヤでしたか。
T.C.
英国、ロンドン
【ベンジャミン・クレームの師は、その『運転手』がマイトレーヤであったことを確認した】

マイトレーヤの裂開の剣——選集
Maitreya’s Sword of Cleavage──a compilation

 マイトレーヤの裂開の剣というテーマに関する引用文の選集を掲載する。引用文は、マイトレーヤのメッセージ(『いのちの水を運ぶ者』)、ベンジャミン・クレームの師の言葉(『覚者は語る』第Ⅰ巻、第Ⅱ巻)、およびベンジャミン・クレームの著書から抜粋したものである。

キリストが(われわれが想像しないほど早い時期に)戻ると言われたとき、彼は、見せかけの平和という心地良いことばではなく、剣を、「裂開の剣」をもたらしたのである。それは父と子を、兄弟と兄弟を引き裂く剣である。今日われわれが目撃しているのは、まさに「裂開の剣」の働きである。マイトレーヤの愛のエネルギーはすべての者を刺激する――正義と分かち合いを愛し、そのために働く者も、世界に不和と分離を引き起こす者も同様に刺激する。このようにして、「裂開の剣」によって産み出される明確な対比を通して、人々は将来についての本当の選択を――すべての人間、貧しく飢えたる者たち、そしてマネーの男たちや世界の平和の破壊者たち、の未来のための選択を――することができる。われわれ一人ひとりがこの分割のどちらの側に真実を見いだすのかを選択しなければならない。
(『覚者は語る 第Ⅱ巻』─裂開の剣─より)

決定の時が人類を待つ。わたしの愛が両極端の見解を創り出す、それがわたしの振り回す剣である。我が友よ、あなたがたがどこに位置するかをよく知り、わたしの光を受けなさい。あなたの足をどこにおくか気をつけなさい――明日へつながる階段か、または忘却の彼方へか。世の男女よ、我が兄弟たちよ、子供たちよ、あなたがたに訴える――わたしのもたらす真理の光の中へと通じる道を歩みなさい、そして本来のあなたである神を顕せるようになりなさい。これこそが、人の唯一の道であることを知る者は、今日大勢いる。我が友よ、今のこの時に、あなたがたが占める位置をはっきりと示しなさい。
(『いのちの水を運ぶ者』第64信より)

「裂開の剣」は違いをはっきりとさせ、人類の前にある選択を明確にする。剣の与えるより明確なビジョンをもって、ますます多くの人々が、もはや平和以外の選択肢がないことを知る。もしわれわれが平和をつくらなければ、この惑星上のすべての生命の完全な破壊となるだろう。
(『多様性の中の和合』)

分かち合って世界を再創造し、すべての人が平和にかつ豊かに一緒に生活することを可能にし、マイトレーヤが言われたように「誰も窮乏することなく、同じ日が二度と繰り返されることなく、同胞愛の喜びがすべての人間を通して顕される」ような世界にするのか。それとも、腐敗行為と悲惨なありさまを許容し続け、やがて世界を破滅させるのか。それが人類の前にある選択です。マイトレーヤはこれを強調し、人々ははっきりと理解するでしょう。
(『生きる術』)

抱き合おう、諸人よ!

アンドレア・ビストリッヒ

ベートーヴェンの交響曲第9番は人類に訴えかけ、和合に向けて鼓舞する──現代においても。第4楽章の「歓喜の歌」は、抗議行動において世界中の人々に寄り添い、正義と自由を求めて奮闘する人々に勇気を与えてきた。….合唱団と数人のソリストが参加する史上初の交響曲であった。まだボンで学生だった頃、ベートーヴェンは有名な詩「歓喜に寄せて(An die Freude)」に音楽を付けることを決意した。この詩は1785年の夏、ドイツの詩人で哲学者のフリードリッヒ・シラーによって書かれた。しかし、ベートーヴェンがこの作品に完全に専念したのは1823年になってからであった。

それはベートーヴェンにとって最後の完成作品となった。彼は生涯を通じて健康問題に悩まされ、年齢を重ねるにつれて症状は悪化した。聴覚に問題があったため、ベートーヴェンは晩年、完全に孤立し、誰からも疎外された。彼は1827年3月26日、56歳で亡くなった。
ウィーンでの初演から200年が経過した。今日、第九は世界で最も有名で印象的なクラシック音楽作品の一つとなっている。
しかし、この交響曲の何がそれほど特別なのか。なぜ多くの人にとって忘れられず、印象深いのか。アメリカの指揮者で作曲家のレナード・バーンスタインはかつて、この交響曲第9番を「限りなく満足感があり、興味深く、感動的なもの」と評した。彼はこう述べている。「この音楽は、限りなく耐久性があるだけでなく、おそらくこれまでで最も普遍性に近づいた音楽です。……これほど多くの人、老若男女、教養のある人や無知な人、アマチュアやプロ、洗練された人や素朴な人に直接語りかける作曲家はかつて存在しませんでした。……こうしたあらゆる階級、国籍、人種的背景を持つ人々に対して、この音楽は思想の普遍性や、人間の同胞愛、自由、愛の普遍性を語りかけています」
すべての人々に平等に訴えかける、この統一をもたらすような価値観の普遍性により、欧州評議会は1972年、主題である「歓喜の歌」を欧州の歌に選び、将来の「すべての欧州の公式行事で」演奏することにした。ドイツの指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンは、器楽版の編曲を依頼された。1985年、これは欧州共同体によって正式に「欧州の歌」として採用された。これは、ヨーロッパの多様性の中の和合を表現したものであり、自由、平和、連帯という加盟国共通の価値観を象徴している。
1956年と1964年のオリンピックでは、第4楽章の第1主題がドイツ連邦共和国とドイツ民主共和国の選手団の国歌として使用された。のちに、他の国々が異なった歌詞を付けて自国の国歌として使用した。
1989年のベルリンの壁崩壊後、この交響曲は東西ドイツの人々にとって特別な意味を持つようになった。
2001年、ベートーヴェンの第九は、世界のすべての国家と民族の平和の象徴として、ユネスコの世界記憶遺産に登録された最初の音楽作品となった。多くのオーケストラが伝統的に大晦日にこの作品を演奏し、この交響曲の象徴的な力を強調している。….

ベートーヴェンは当時、自分の音楽がどのような影響を与え、誰がそれを手にすることになるのか知る由もなかっただろう。この国歌は長年にわたって何度も悪用されてきた。例えば、第九はヒトラーのお気に入りの交響曲で、誕生日に演奏された。ベートーヴェンはおそらく、ヒトラーがこの作品を愛したことに恐怖を覚えることだろう。しかし、ベートーヴェンはまた、ドイツから日本まで、チリから中国まで、世界中の人々が歓喜の賛歌を歌い、非常に多くの言語で通用することに感激することだろう。この賛歌は映画で使われ、広告でも使われている。また、「歓喜の歌」と「フラッシュモブ」を検索語として使うと、例えばYouTubeで、数え切れないほどの例が見つかる。どういうわけか、世界中のあらゆる種類のフラッシュモブで非常に人気がある。
バーンスタインはその絶大な人気の理由をこう説明した。「世界が苦悩し、希望を失い、無力感を覚えているこの時代に、私たちはベートーヴェンの音楽を愛し、それを必要としています。絶望に打ちひしがれていても、自分自身が変化し、豊かになり、勇気づけられることなしに、この交響曲第9番を聴くことはできません」….

結局のところ、ベートーヴェンの作品は「平和のための闘い」に関するものだ、とレナード・バーンスタインは言う。「精神の充足のための、静穏と、歓喜の勝利のための闘いです。彼は音楽でそれを達成しました。どうにかして、私たちは彼の音楽に耳を傾けることによって、そこから学ぶことができるに違いありません。いや、単に耳を傾けるのではなく、注意力と集中力の限りを尽くして聴くのです。そうすれば、私たちは人類と呼ばれるにふさわしいものへと成長できるかもしれません」

マルク=アンドレ・セロス著
『世界の起源:人類が土壌に与える影響と温室効果ガス』

ドミニク・アブデルヌールによる書評 第三部

 マルク・アンドレ・セロス氏は微生物学者であり、生態学者であり、教師でもある。パリの国立自然史博物館、ポーランドのグダニスク大学、中国の昆明学院で教授を務める。彼の研究は、互いに有益な関係(共生関係)にあるものの生態学と進化に焦点を当てている。

セロス氏は、著書『世界の起源』や『共生』、そして自身のYouTube動画で、共生、つまり協力という形で関わり合う生き物に満ちている土壌の役割、人類がいかに土壌を粗末に扱っているのか、そして、土壌が気候変動をどのように悪化させるのか、あるいはどのように抑制するのに役立つかについて説明している。前二回の記事では、土壌の役割と土壌を構成するもの、そして共生に焦点を当てた。最後に、この三回目の記事では、人類が土壌に与える影響と、土壌が気候変動に与える影響について考察する。
土壌生物の基本的な機能とは、時間の経過とともに複雑さを生み出し、生命の機能的・化学的多様性を生み出すことや、リサイクル、つまり生物が排出するあらゆる廃棄物を分解し、他の生物が分解したものを資源として利用すること、そして、それぞれがバランスの取れた交換をする際、他者の手助けとなる機能を提供するなど、様々な土壌生物の間で共生が行われることである、とセロス氏は説明している。

100年(または1,000年)に1センチ

農業用土壌の深さは平均1メートルである。平均すると、100年ごとに(状況によっては1,000年ごとに?)1cmの土壌が形成される注1。そのため、良質な農業用土壌が形成されるには1万年から10万年かかる。温帯地域で1cmの土壌が形成されるのに約100年かかるとすると、1年で完全に侵食されてしまう。
1万年前の新石器時代に農業が始まるまで、土壌形成と浸食のプロセスは一般的にバランスが取れており、土壌層の安定化につながっていた。農業、特に集約農業では、土壌の侵食が通常の10倍から100倍も速く、100年から1,000年後には土壌が消滅し、事実上砂漠化する。実際、地中海文明の都市はかつて肥沃だった平原地帯に築かれたが、乱開発されたために、現在は土壌が非常に痩せている。
土壌侵食は幾つかの要因によって起こる。その要因とは、有機物(土壌の粒子を結合させ、水や風に流されるのを防ぐ腐植土)の減少、土壌生物(岩石を分解するバクテリア、植物の根にミネラルを運ぶ菌類)の減少、そして収穫の合間の被覆植物の不足などである。そのような場所では、根や茎が土を固定できないのである。ヨーロッパの土壌は1950年代以降、有機物の半分を失っている。人類が土壌に与えた多くの損害には、耕作、人工化、灌漑による塩類化、焼畑、無機質肥料や農薬の散布などがある。….

セロス氏は、土壌を気候変動において主要な役割を果たすものとして位置づけ、問題になるか解決策になるかはその管理方法次第であるとし、この問題に対処するための解決策を数多く提案している。
セロス氏は、2015年のCOP21(パリ協定)でフランスが「1000分の4」というコンセプトを打ち出したことを取り上げている。毎年、人類が生産するCO2は、土壌中の炭素貯蔵の1000分の4に相当する。1000分の4の炭素を土壌に蓄えれば、私たちが温室効果に与えている影響は相殺されるのである。
主な活動地域は、有機物が不足している農業用土壌である。炭素を貯蔵したり、他の土壌成分を結合したり、水とそのミネラルを保持したり、浸食と洪水を軽減したり、食物の栄養を補強したりするなどして有機物の含有量を増やすことは、多くのプラス効果をもたらすだろう。
再生(または保全)農業は、これらすべてを可能にする。この種の農業は、有機物と生物を土に戻すことで、土壌を農業システムの根幹に据える。耕作をやめ(土壌労働者に仕事をさせるため)、有機物で土壌に栄養を与え、土壌を一年中、植物で覆(ルビ:おお)い(土壌を侵食から守り、多様性を養うため)、土壌をかき混ぜるのを最小限に抑えて、それから種をまくのである。….

土壌を考慮に入れなければ、気候変動をコントロールできないことは明らかである。

(マルク・アンドレ・セロス『世界の起源(L’origine du Monde)』、YouTube動画)

注:この記事で示した数値は、温帯気候の土壌の数値である。気候、場所、土壌の種類、および国によって異なる場合がある。

シェア・インターナショナル2024年6月号
印刷版全内容

  • 覚者より ベンジャミン・クレーム筆記
    理性への呼びかけ / 2016年の危機についての覚者のコメント
  • 編集部のコメントと今月号の内容概説
  • 視点
    「不条理だ!」 : 米国の億万長者の税率は労働者階級より低い
    ジェイク・ジョンソン
  • 報道の自由と気候ジャーナリズム : 危機において団結する
    ファルハナ・ハク・ラーマン
  • すべての人のためのより良い未来
    市民集会 政策立案への新たなアプローチ
  • 学生ジャーナリストが 「ニュース砂漠」 を再生させる
    抱き合おう、諸人よ!
    アンドレア・ビストリッヒ
  • アダルツ・イン・ザ・ルーム
    ベトナム戦争時代を彷彿とさせる学生たちの抗議活動
    若者が舵を取る -覚者より / ベンジャミン・クレーム筆記 2012年3月1日
  • 時代の徴
    神聖なる遍在/白いバファローがラコタ (スー) 族の予言を成就させる/ダミー核弾頭を撃ち落とす UFOが撮影される
  • 世界トップの気候科学者の77% が 2.5°Cの地球温暖化が起こると考え、 恐怖を感じている
    オリビア・ロザンヌ
  • マルク=アンドレ・セロス著
    『世界の起源: 人類が土壌に与える影響と温室効果ガス』
    ドミニク・アブデルヌールによる書評 第三部
  • マイトレーヤの裂開の剣 -選集
    Maitreya’s Sword of Cleavage - a compilation
  • ギラド・エルダン氏は、失敗を運命づけられたイスラエルの戦略を明らかにして、世界に有利な働きをしている
    ジェフリー・D・サックス
  • 治療
    アート ユリアーンス
  • 編集長への手紙
    内なる外なる真実 他
  • 読者質問欄
    回答 ベンジャミン・クレーム

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